高音質&低遅延なBluetooth「LEオーディオ」まもなく登場? ソニーが技術解説

高音質&低遅延なBluetooth「LEオーディオ」まもなく登場? ソニーが技術解説

Bluetooth SIGは18日、関連する最新技術やイノベーションを解説する「Bluetooth東京セミナー2021」を開催した。イベントには、ソニー代表としてBluetooth SIGの標準化活動に参画する関正彦氏が講演し、新規格「LEオーディオ」(LE Audio)の説明が行なわれた。

LEオーディオは、今後発売されるワイヤレスイヤフォンやスマートフォンなどに搭載が見込まれている新しいBluetooth音声規格。

長らく使われてきた従来のBluetooth音声規格(Classic Audio)を再定義するものとして2020年1月に発表され、近くLEオーディオに必要な全仕様が正式版になる見込みだ(現在、一部プロファイルが仕様の最終策定待ち)。

Bluetoothオーディオ規格の変遷LEオーディオの特徴

LEオーディオは、従来とは異なる新しい音声コーデック・伝送方式を用いることで、高音質・低遅延を実現しているのが特徴。

その標準コーデックとして採用されているのがLC3。独フラウンホーファー研究機構が中心となって開発した最新の音声コーデックで、A2DPの標準コーデックであるSBCと比べ、低ビットレートで同等音質を実現可能とされている。

実際の調査においても、345kbpsのSBC音声と160kbpsのLC3音声を聞き比べた際、低ビットレートなLC3の方が音質評価スコアが高かったという。

LEオーディオの標準コーデックは「LC3」

高音質&低遅延なBluetooth「LEオーディオ」まもなく登場? ソニーが技術解説

またLEオーディオでは、左右独立伝送のマルチストリームに新対応。QualcommのTWS+やAirohaのMCSyncなど、これまで各社独自方式だった左右独立伝送が、LEオーディオで標準規格化された。

さらに多人数に同時伝送できるブロードキャスト機能も追加。例えば、テレビから複数のヘッドフォンに同時伝送して、同じコンテンツを複数人で楽しめるようになる。この機能は、劇場や店舗での商業利用ほか、広場や駅・空港といった場所でのアナウンスといった活用が期待されている。

LEオーディオのユースケース

LEオーディオでは、Bluetooth 5.2(Core Version 5.2)以降で採用された2つの機能「LE Isochronous Channels」、および「Enhanced Attribute Protocol(EATT)」が必要。前者はLEオーディオを伝送するための通信方式で、後者は複数のATT PDUを同時に通信できるようにATTを拡張したものとなる。

中でもキーとなるのが、LE Isochronous Channels。前述したマルチストリームやブロードキャスト機能はこの新しいストリーミング方式を採用することで実現されていて、オーディオデータをインターバル毎に時間同期で送ることで低遅延伝送を可能にしているという(従来のA2DPは非同期)。

LEオーディオでは「LE Isochronous Channels」と「Enhanced Attribute Protocol(EATT)」が必要になるLE Isochronous ChannelsLEオーディオのスタック構成Generic Audio Frameworkプロファイル

講演したソニー HE&Sプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部 モバイル商品技術2部 パートナー技術課 ワイヤレステクニカルマネージャーの関氏は、ソニーが初期からBluetooth SIGでのLEオーディオ規格化活動に参画し、早期の仕様策定完了を目指して活動してきたことをアピール。

ソニーがLEオーディオを必要とする理由として「SBCでは困難な低遅延化の実現、低ビットレートによる安定伝送、プラットフォームに依存しないマルチストリーム、ブロードキャストによる新しいユーザー体験」を挙げた。

ソニーが考えている、LEオーディオの進化例

さらに、将来的に見込んでいるLEオーディオの進化として、ゲーム使用に耐えうる更なる低遅延の規格拡張や空間オーディオへの対応、帯域拡張による更なる高音質化、マルチチャンネルサラウンド対応などを例として紹介し、「こうした機能が実現できるよう、規格化が進めば良いなと考えている」と語った。

講演終了後、リスナーから「ソニーはいつLEオーディオ対応製品の発売を予定しているか」という質問が寄せられると、関氏は「具体的な商品の計画についてはお話しを控えさせていただきたいが、なるべく早い時期にやりたいと考えている」とコメントした。