【図解】テスラは何がどうすごいのか、「自動車業界の破壊者」のビジネスを徹底分析 |ビジネス+IT

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    【図解】テスラは何がどうすごいのか、「自動車業界の破壊者」のビジネスを徹底分析

    Tesla(テスラ)といえば、EV業界の王者や自動車業界のディスラプター(破壊者)として知られ、現CEOのイーロン・マスクの発言はあらゆる業界に影響をもたらすほどの存在感を発揮しています。しかし、実際、テスラはどのような強みをもってして、全世界から注目されているのでしょうか。アジアクエスト 金澤一央氏が著した『DX経営図鑑』から、テスラのビジネス分析を本稿で紹介します。なぜ、「存在そのものがディスラプター」と評されるのでしょうか。

    金澤 一央、DX Navigator 編集部

    金澤 一央、DX Navigator 編集部

    ・金澤一央アジアクエスト 執行役員CMO兼DX戦略室長。大手量販店、SI企業等を経て2001年、ネットイヤーグループに参画。同社プロデューサーを経て、データ分析専門の事業部を設立、大手企業を中心に通算100社を超えるプロジェクトを牽引。2016年、留学を機に同社フェロー就任。2019年よりアジアクエストの「DX Navigator」編集長兼DXフェロー。2020年より現職。ニューヨーク大学大学院SPSインテグレーテッド・マーケティング学科(休学中)。東京工業大学大学院エッセンシャルMOT修了。高崎経済大学経済学科卒業。・DX Navigator編集部デジタル・インテグレーターのアジアクエストが提供するデジタルメディア「DX Navigator」の運営を行う。DXが生み出す新しい価値交換と技術革新、ビジネスモデルの創出に関連するトレンドやコラムを発信している。

    <目次>
    1. クルマの消費構造の破壊
    2. 存在そのものがディスラプター─独自の戦略とその効果
    3. テスラが取り去るペイン─EV特有のペインの解消
    4. テスラがもたらすゲイン─サステナブルな自動車とライフスタイルの提供
     今や、Tesla(テスラ)というブランドを知らない人はいないのではないでしょうか。一般的な自動車に比べると高額なため、テスラを所有している方は少ないかもしれません。それでも、テスラは電気自動車(EV:Electric Vehicle)という新しい業界のリーダーであり、100年の歴史を誇る自動車産業の革命的ブランドアイコンであるのは間違いありません。 テスラは2003年、カリフォルニア州のサン・カルロスという人口3万人程度の小都市で創業しました。サン・カルロスはサンフランシスコとサンノゼのちょうど中間に位置し、テスラはシリコンバレー発の自動車メーカーといえます。 CEOのイーロン・マスクが有名ですが、彼はテスラの創業者ではありません。テスラを創業したのは、マーティン・エバーハードとマーク・ターペニングという2人でした。 エバーハードはWyse Technologyという電子機器メーカー(現在はコンピューター製造販売のDell傘下)のエンジニア出身で、1987年にNetwork Computing Devices(NCD)というシンクライアント(サーバ処理を前提として機能や内蔵機器をシンプルにしたコンピューターデバイス)を製造する会社を立ち上げます。この会社は1992年に上場を果たします。 一方のターペニングは、航空機と防衛機器を取り扱う巨大企業、Textronのネットワークエンジニアとしてキャリアをスタートしました。 1997年、2人はNUVO media(現 Rocket eBook)という電子書籍デバイスの会社を立ち上げ、2000年に1.87億ドルで売却します。そして、この資金を元手に、テスラを設立します。イーロン・マスクは2004年に投資家としてテスラに出資し、会長に就任、2008年にはCEOを兼任することになり、2021年現在に至っています。 ■テスラの独自コンセプト テスラの創業時からのテーマは「テクノロジー企業の側面も持つ自動車製造企業」であり、そのコアになるのは「バッテリー、ソフトウェア、独自のモーター」でした。つまり、テスラは従来の自動車の根幹ともいえる「エンジン」を完全に外したコンセプトからスタートしました。 また、イーロン・マスクは2006年、最初の製品であるTesla Roadsterのコンセプト発表時に、「炭化水素経済から太陽電池経済への移行を促進する」ためにテスラは存在すると述べました。テスラでは人類が化石燃料利用による経済から脱却するために電気自動車(EV)を製造している、という存在意義を定義しています。 2006年の宣言通り、イーロン・マスクはSolarCityという太陽光パネル製造企業を立ち上げ、2016年にはテスラの傘下に編入しました。こうしてテスラは自ずと、従来型の自動車産業とはまったく異なるアプローチで自動車を製造していくことになりました。初号機である Tesla Roadster以降は、2020年までに4つのプロトタイプと4つの量産機を製造し、2020年3月には通算100万台の製造を達成しました。 現在は、世界で最も販売されている電気自動車(EV)メーカーとなっています。■「CASEであってCASEではない」 テスラという企業を表現するとき、「CASE」という言葉がしばしば用いられます。CASEとは、Connected(オンライン接続)、Autonomous(自動運転)、Shared&Service(カーシェアリングやライドシェア)、ElectricVehicle(電気自動車)の頭文字をとった造語で、ダイムラーAGのCEOディーター・ツェッチェが同社の中期戦略を発表した際に示したコンセプトです。 この言葉は次世代の自動車業界が向き合うべき市場の形として認知されるようになり、テスラもまた、CASEの代表格とみなされるようになりました。ときに、CASE株という投資対象にくくられることもあります。「CASE」は、自動車メーカーが次世代の市場に適合するためのキーワードであり、CASEに対応した自動車を作る、販売するということが戦略指針になりました。 テスラはすべてにおいてCASEに当てはまる企業で、コネクテッドカー(ICT端末としての機能を有する自動車)に自動運転を備えた電気自動車を製造販売しています。他社と大きく異なる点を1つ挙げるとすれば、Robotaxiという会社を設立し、自動運転車両によるライドシェアサービスを運営していることです。 ほぼすべての自動車メーカーが車両製造を基本とするなか、テスラは周辺サービスも含めて自前で取り組むスタンスを取っているのです。 テスラはCASE企業ですが、自動車メーカーであると同時に、自動車を用いたサービスを提供し、燃料も自ら確保しています(テスラは今後、車両に太陽電池を装備し、完全なる自家発電によって運行することを考えている)。 従来の自動車メーカーは、自動車産業が生み出した周辺産業との協調を図りながらCASEに対応しているのですが、テスラは構造そのものを破壊して、自ら創造しようとしています。よって、テスラはCASE企業であって、CASE企業ではない、ともいえるのです。 ■テスラのクルマの製造法 テスラは、その特殊な製造工程も大きな特徴です。 1台の自動車は約3万個の部品から成立しているといわれ、各部品を製造するメーカーが多数存在します。トヨタやGM(ゼネラルモーターズ)など完成品としてのブランドは通称コンストラクター(建設者)と呼ばれ、商品コンセプトや設計、最終組立から販売までを担当します。実際の部品を製造するのはサプライヤー(供給者)という部品メーカーであり、その中でも主要部品であるパワートレイン(動力部分)やサスペンション、車体部品や電装品を受け持つ一次サプライヤーを Tier(ティア)1、Tier1が製造する「部品の部品」を製造する二次サプライヤーをTier2と呼びます。 つまり、自動車業界とはコンストラクターを頂点とする巨大な企業群による分業によって成立しており、非常に複雑な分解行程と商流の中で自動車が製造されているのです。 テスラはこの複雑な製造工程の多くを、テスラの直営工場内で完了させてしまいます。多くの部品を自らの工場で製造し、組み上げまでするのです。 たとえば、ドアやボディなどの板金部品はTier1が製造・納入し、コンストラクターの工場で組み上げるのが普通です。しかし、テスラではロール状のアルミ板を自社工場でプレスし、ボディなど板金部品のほとんどを製造してしまいます。自動運転の目の役割を担うカメラやセンサー、コンピューターを稼働させるための半導体、バッテリー部品であるリチウム電池などは外部サプライヤーに依存しますが、ボディやモーター、そしてバッテリーなどの主要部品はテスラの工場内で製造します。 つまり、テスラには事実上のTier1(主要部品サプライヤー)が存在しません。ほとんどの完成部品は自社内で組み上げてしまうので、特定の末端部品のみをTier2のサプライヤーから直接受け取るのです。 ■テスラの販売形態 もう1つのテスラの特徴は、その販売形態です。テスラの車両を買う場合は、基本的には同社のWebサイトから注文することになり、納車は最寄りの直営店舗のTeslaストアか、直営の充電ステーションで受け取ります。近くにテスラストアがない場合は、自宅まで配送するホームデリバリーも選べます。 このようにテスラには、いわゆるカーディーラー、販売代理店という概念がありません。初号機Tesla Roadsterの販売から現在までを一貫して、直営Webサイトによる予約受付で販売しており、さらには広告も一切打っていません。 イーロン・マスクは、「常に需要が供給を上回っているので、テスラは広告を打つ必要がない」と言いますが、緻密なPR戦略と自社メディア(主にデジタルメディア)の積極的な活用が背景にあることは間違いありません。 ともあれ、テスラは自前完結型の製造工程と、デジタル販路を駆使したスタイルによって、受注生産型の自動車メーカーを貫いています。徹底したオートメーション化と自社工場での集中生産で、分業行程と商流を圧縮し、組み上げコストを抑え、コストダウンに必要な大量生産の必要性をなくし、余剰在庫を売り切る必要性を排除しているのです。 一般的に、自動車メーカーの多くは大広告主であり、年間数百億から数千億円にも上る広告費を投入しています。さらに、自前の販売ディーラー網を完備し、製造と販売の双方で利益を確保する構造です。テスラはこの伝統的な流通構造を、自社のデジタルメディアを活用することで、根本的に破壊しようとしています。 ドライブの喜びと移動という「従来のクルマが提供する価値」に加え、テスラが描く「新しい未来生活」は消費者にとって大いなるゲインなのです。【次ページ】テスラが取り去るペインともたらすゲインを徹底図解

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