アップルのアプリ内課金ルールは「反競争的」、見直し命令

アップルのアプリ内課金ルールは「反競争的」、見直し命令

 大きな注目を集めているEpic GamesとAppleの訴訟で、米連邦地方裁判所が米国時間9月10日に下した判決は、いずれか一方の主張を全面的に認めるものではなかった。Appleはサードパーティー開発者が「iOS」アプリにアプリ内課金のメカニズムを追加することを禁止するべきではないとされたが、同時に、州または米国の反トラスト法(独占禁止法)違反には当たらないと裁定された。

提供:CNET

 Yvonne Gonzalez Rogers連邦地裁判事は、「成功は違法ではない」とした。

 Rogers判事は、Appleが反トラスト法の下で独占企業であるとの結論を下すことはできないとしながらも、カルフォルニア州の競争法の下で同社に反競争的な行為があったと判断した。Appleの「App Store」のルールについて差し止めを命じ、アプリ内課金の見直しを求めた。また、顧客がアプリ内でアカウントを設定する際に自発的に提供した連絡先情報を通して、開発者が顧客と連絡を取ることを、Appleが禁止するべきではないと判断した。この命令は90日後に発効する。

 Rogers判事は、「誘導を禁止するAppleの条項は、重要な情報を消費者から隠し、消費者の選択を不正に抑制している」とした。「Appleの初期の反トラスト法違反と合わせると、誘導を禁止するこれらの条項は反競争的であり、これらの条項を排除するための全国的な改善策が求められる」

アップルのアプリ内課金ルールは「反競争的」、見直し命令

 Epic Gamesは、Appleが同社の「フォートナイト」をApp Storeから削除したことを受け、Appleを提訴した。Epicは、フォートナイトのゲーム内通貨を同社から直接購入するシステムを導入し、Appleが開発者に課す30%の手数料を回避しようとしたことで、App Storeからアプリが削除された。Appleの行為は反トラスト法に違反するとEpicは訴えていた。Appleの最高経営責任者(CEO)Tim Cook氏は5月、米連邦地方裁判所に証人として出廷した。

 Rogers判事は、AppleがEpic Gamesから契約違反による損害賠償を受ける権利があると裁定した。Epicは、2020年8~10月の間にiOSのFortniteアプリ内で「Epic Direct Payment」を通じてユーザーから徴収した1200万ドル(約13億2000万円)超の売上高の30%に相当する金額を損害賠償として支払う必要がある。また、2020年11月から判決日までの間に同様に獲得した売上高があれば、その30%を支払わなければならない。

 判事は、Appleは独占企業ではないと結論付ける前に、両社が定義する対象となる市場については同意しないと述べた。

 判事は、「最終的に、訴訟の証拠を評価した後、ここで対象となる市場はデジタルモバイルゲーム取引であると裁判所は判断した。ゲーム全般ではなく、App Storeに関連するApple独自の内部のオペレーティングシステムでもない」としている。「モバイルゲーム市場そのものは、1000億ドル(約11兆円)規模の業界だ。この市場規模は、Epic Gamesが今回の行動に至った動機を物語っている。他のすべてのビデオゲーム市場への進出を果たしたEpic Gamesにとって、モバイルゲーム市場は次なるターゲットであり、同社はAppleを妨害者とみなしている」(Rogers判事)

 Appleは判決を受けて出した声明の中で、「裁判所は10日、われわれには最初から分かっていたことを認めた。App Storeは反トラスト法に違反していないということだ。裁判所が認めたように『成功は違法ではない』。Appleは、事業を展開するすべての分野で厳しい競争に直面しているが、消費者や開発者がAppleを選ぶのは、Appleの製品とサービスが世界で最も優れているからだと信じている。われわれは引き続きApp Storeを、繁栄する開発者コミュニティーと210万人以上の米国雇用を支え、規則が誰にでも平等に適用される、安全で信頼できるマーケットプレイスとするために尽力していく」と述べた。

 EpicのCEOであるTim Sweeney氏は、「今日の判決は開発者、あるいは消費者にとって勝利ではない」とツイートした。Epicは12日、不服を申し立てたと報じられている。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。