PFN、開発中の独自モバイルマニピュレータ「SK01」をロボット学会で公開

PFN、開発中の独自モバイルマニピュレータ「SK01」をロボット学会で公開

モバイルマニピュレータ「SK01」

モバイルマニピュレータ「SK01」。作業用アームの上にカメラ用サブアームを配置

 「SK01」の外見上の最大の特徴は、伸縮型の昇降ユニットの上の作業用のアームの上に、もう1つカメラ付きサブアームがついていることだ。このサブアームによって、より高いところから、作業を行なうアーム先端のエンドエフェクタ(ロボットハンド)を常時カメラの視野に入れることができる。同時にコンパクトさも両立した。

 ロボットは高さ0.9mから1.65m。幅は60cm。重量は80kg。自由度は全部で12。内訳は台車車輪が2、アームの上につけられたサブアームが3、残りがアーム、昇降、台車旋回軸。車輪には荷重センサーが入っていて重心の偏りを検知し、転倒を抑制する。

 アームのリーチは0mから1.5m。半径740mm。TCP(ツール・センター・ポイント)速度は1m/s。可搬質量は3kg(エンドエフェクタ含む)。これは人が日常的に仕事として持ち運んでいい質量から設定された。エンドエフェクタは交換可能。ガチャっとはめることで異なる用途向けのエンドエフェクタに切り替えることができる。

PFN、開発中の独自モバイルマニピュレータ「SK01」をロボット学会で公開

 移動速度は最大で2km/h。踏破性能は段差5mm、斜面5度。稼働時間は約8時間。バッテリーはリチウムイオン電池(24V)。

 手首には6軸力センサーが内蔵されている。機械システムとしては重くなりすぎることを避けるため剛性を求めず、ソフトウェアで補償することを目指した。また、「SK01」はユニット構造となっており3分割できる。現場でパパッと組み立ててロボットの実験ができるものにしているという。人と共存するロボットなので、関節部の挟み込み防止などは配慮されている。

 電気システムには一般的なバスを使っており、駆動系とマルチメディア系を分離して分散配置している。メンテナンス性やコストを考慮し基板種類も極力減らし、少ない基板品種で多数のセンサ接続を実現した。制御系には高速かつ大容量データの送受信が可能なCAN-FD(CAN with Flexible Data Rate)を採用している。マルチメディア系は USB 3.1を利用。

 ソフトウェアは安全性とリアルタイム性を考えて、下位システムと上位システムを分けた。両者のあいだはCAN-FDで繋がれている。下位システムは実時間性や機能安全に関わる機能を担当し、モータドライバ、センサ、I/O、電源の制御を行なう。上位システムはアプリケーションに関わる機能を担当する。開発基盤にはROSを採用しており、全身動作計画、SLAM、ナビゲーション、マーカーの認識などを担う。

 基本的にハードウェア検証用である「SK01」内部には、ビジュアルサーボと制御に必要な計算機しか搭載していない。バッテリーと熱の問題があるためだ。障害物回避などには、以前本誌でもレポートした建設現場用掃除ロボットに使われているような障害物認識・回避機能が使われているとのこと。

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 安全性についても考慮されており、ISO 13482に準拠。第三者機関による設計レビューも行なっている。協働ロボット(人と空間を共有できるロボット)の安全規格ISO TS 15066を利用して参考値とし、リスク評価を行なった。転倒時のリスクや故障モードなども検討されている。現在策定中のモバイルマニピュレータの安全規格JIS B 8446-4に対して意見を出して反映されているという。